ーガタンゴトン、ガタンゴトン

電車が一定のリズムを刻む。
朝の電車の窓からは建物や、出勤や通学のために歩く人、木々がせわしなく流れてるように見える。

電車の外よりも中の方がゆったりと時間が流れている。
新聞を読む人、携帯電話をいじっている人、音楽を聞いている人、眠っている人・・・
たいていの人は電車の中でのマナーは守れているので不快感はない。
その上、今はまだ電車はのぼりの最初の方だから車内の席にゆとりがある。

僕は意識を窓の外から電車内へ向ける。
僕の毎朝の通学の楽しみ、それはこの車両で、あまり人の多くない乗り始めの頃に「彼女」を眺めることだ。

「彼女」は今日は一番端の席に座っていて、壁に頭をもたれて眠っている。
髪の毛が顔にかぶっていて、「彼女」の顔はあまりよく見えないがそれでも「彼女」が美人だということがわかる。
それくらい「彼女」は美人だ。

「彼女」は僕の通っている学校のすぐ近くの女子校の制服を身に纏っている。
「彼女」が制服に袖を通すだけで、制服の魅力が何千万倍も増すと言っても過言ではない。断言する。
「彼女」がもっているオーラがそうさせているのだ。

「彼女」が通ってる学校が制服でわかっても、僕は「彼女」の名前も声も知らない。