黒木健蔵の冒険

「おっ、綺麗になったな。おじいさん、ありがとう。やっぱり、靴が汚いと、なんだか、気持ちまで荒んだ気がしてくるからな」


「いやいや、仕事ですから、お金をいただく以上は、完璧に仕上げるのが、私のモットーですから」


サラリーマンから、お金をもらうと、老人は鳥打ち帽を脱ぎなから、ペコリと頭を下げた。


サラリーマンが気がつかないのも無理のないことだった。

健蔵は、それこそ、どこにでもいるような老人だった。

恐らく、この靴磨きのおじいさんが柚木華製薬の会長などと誰が気がつくだろうか。


しかし、この2週間後、思いもよらない人物に見つかってしまうのであった。