「…拓斗?」

静かに病室に入る。
呼んでも応答はない。


病室のベッドには、体中にアザをつくった拓斗がいた。


「詩織…!」

目を覚ました拓斗が私を呼ぶ。

「何で殴り合いなんかしたの?」


「腹立ったんだ」

「どうして?」


「詩織をまるで自分のものみたいに言いやがった」


なにそれ。
西崎は何がしたいの。

私も腹立ってくるよ。


「痛い?」


「…おう。でも、稜は?大丈夫なのか…?」


こんなときでも西崎の心配をするなんて…。

拓斗、心が広すぎるよ…。