あの日から3日が経った。

部屋でテレビを観ていると稲葉さんが出てきた。

(本当にこの人と会ったのかなぁ?)と今でもあの時の出来事が信じられない。

連絡先は交換したものの連絡は来ない…

当たり前だよね。私と稲葉さんでは住む世界が違い過ぎるもんね。

私の連絡先を聞いたのも道に迷った時の為だし。

あの時の事なんてもう忘れてるかもしれない…

(それにしても、稲葉さんの歌声は本当に素敵)とボーッとテレビを観ていた。

そこへ携帯が鳴った。

携帯を見ると画面には稲葉さんと出ている。

慌てて電話に出た。

「は、はいもしもし…」

「もしもし、稲葉です。分かりますか?」

「はい…」

私は緊張のあまり次の言葉が出てこない。


「こんばんは。急に電話しちゃってごめんね。今大丈夫?」と稲葉さん。

「はい。大丈夫です」

「この前はありがとね。あれからすんなり目的地に着いたよ」

「良かったです。私の説明で着いたか心配しました」

「すぐに連絡出来なくてごめんね。仕事が忙しかったんだ」

「いえ、こちらこそわざわざ連絡して頂いてすみません。今、稲葉さんが出ているテレビ観てるんですよ。何か電話しているのが不思議な感じです。」

「そんな事ないって。そう言えば、まだ名前聞いて無かったんだけど…」