「あっ、すみません。実は私ずっと稲葉さんのファンなんです」

私は慌てて携帯を閉じた。

「本当に?すっごく嬉しいよ!」

「でも、待ち受けにしてるなんて引きますよね?」

稲葉さんに見られた事にショックを受けている私。

「全然。引くわけないじゃん」

と優しい笑顔を見せてくれた。

(面と向かって引くよなんて言えないもんね)

私と稲葉さんは携帯番号とメールアドレスを交換した。

「ありがとね。もし迷ったら連絡するから」

と言い残し車に乗って行ってしまった。

こんな事ってある?と1人でブツブツ言っている私。

夕方会社に戻ってからも思い出す度に胸のドキドキは止まらない。

少し期待していたが、その日は稲葉さんから連絡が来ることは無かった。