時計を見ると12時になろうとしている。

「あっ、もうこんな時間ですよ」

稲葉さんもチラッと時計を見た。

「あ、本当だ。もう12時か…じゃーそろそろ帰ろっか」

「はい」

もっと一緒に居たいけどそんなワガママは言えない。

仕事で疲れてるのにわざわざこっちまで来てくれたんだし。

「明日は何時からお仕事なんですか?」と私。

「明日は1時くらいにスタジオ入り」

「大変ですね。こっちまで来て貰っちゃって、本当にすみません」

「いいんだよ!俺が勝手に来たんだから優希ちゃんは気にしないでね」

「でも…」

「俺は平気だからね」

「は、はい…」

初めて待ち合わせしたコンビニが見えて来た。

(あーもう家に着いちゃう)
楽しい時間と言うのはあっという間だ。

「あー…もう着いちゃったね…」

「今日は本当にありがとうございました」

「どういたしまして」と笑って言ってくれた。

車から降りた私に

「あっ、ちょっと待って…」

と言って稲葉さんも車から降りた。

(どうしたんだろう?)

「はい、優希ちゃん」

と稲葉さんが私に袋を差し出した。

「ん?何ですか?」

「優希ちゃんにお土産」

「えっ、いいんですか?」

「優希ちゃんに買ってきたんだからいいに決まってるじゃん」

「ありがとうございます」

と私は軽く頭を下げた。

「どういたしまして」

と言った後、突然稲葉さんの表情が変わる。

(えっ?私、何か変な事言っちゃったかな?)と私はドキドキしていた。

その時、稲葉さんが口を開いた。