「ところで、新曲はどんな曲ですか?」

「今回は久しぶりにバラードなんだ!」

と嬉しそうに話す稲葉さん。

「そうなんですか?早く聴きたいです。発売日が楽しみです!発売日はいつですか?」

「まだはっきりとは決まってないんだけど、来月の初めには公式発表出来ると思うよ」

「まだ、少し先ですねー」

「あはは…じゃー特別に聴かせてあげるよ!」

「えっ?いいんですか?」

「今CDかけるから、ちょっと待ってて」

思いがけずに、発売前に聴けるなんて嬉しすぎる。

「じゃーかけるよ」

受話器の向こうから音楽が流れてくる。

私はそっと目を閉じた。

凄く良い曲…

稲葉さんの声は素敵。

あっという間に1曲終わってしまった。

「優希ちゃんどうだった?」

「スッゴク素敵な曲ですね。歌詞も凄く良いです」

「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいよ」

「いえ、聴かせてもらっちゃって本当にありがとうございます」

「どういたしまして!実は…出来上がった曲を1番に優希ちゃんに聴いてもらいたくて、CD持って帰って来たんだ」

「えっ?そうなんですか?嬉しいです」

「もっと優希ちゃんと家が近かったらこのCD渡しに行っちゃうんだけどさ!」

「えっ?」

稲葉さんの言った言葉に驚き言葉が出ない。


「あはは…」

稲葉さんは笑った。

「そんな…冗談でも嬉しいです。そんな事言ってもらえて」


「俺は冗談のつもりじゃないんだけどな!」

稲葉さんの言った言葉に私は動揺していた。

何て返したら良いのか分からない。

私は黙り込んでしまった。

とそこへ