月日は流れ、卒業式一週間前。

いつものように私と光は一緒に下校していた。

「そーいや、香音ってどこの高校いくの?」

「んと‥神桜(かんざくら)高校だよー」

神桜高校は、都内にある有名校。

「さっすが香音っ俺とは、レベルがちげーなっ」

そう言って笑う光。

光とは、違う学校。
別れがもう目前に迫った今、私の胸は、寂しさでいっぱいだった。



「今日、俺んちよってけよ」

寂しさを紛らわすかのように、ニカッと笑う光。

「うん。」

私は、光のお家におじゃますることにした。


初めて見る男の子の部屋。
少し緊張しつつも光の甘い香りがして、なんだか安心できた。


「ここ、座れよ」
光の一言で2人並んで床に座る。


「………俺、やだよ…香音と離れんの‥」

目に涙をためながら一生懸命に話す光。

「………」

私は、光の瞳をみつめ、何もいえなかった。

「ずっと、そばに居たかった」
その言葉と同時に光の目から涙が零れ落ちた。


その時、私は、初めて光の涙を目にした。

光の涙は、パールのようにきれいで、私は、ただ見つめることしかできなかった。



ひとしきり泣いて、光は顔を上げた。

「光っ‥ごめんね…光は‥私のためにっ…」

今度は、私の泣く番。気持ちより先に言葉がはしり、
自分でもなにを言っているかわからない。

光は、いつかのように頭をなでてくれた。

そして、甘い香りとともに抱きしめてくれた。

「香音………あいしてる。」