「ひ、裕樹君! いっ、いいよ、そんな……!」
「バーカ。目ぇ離したらどうすんだよ。お前、絶対に迷子だろ」
「そっ、そんな子どもじゃないもん!」
「ったく、ごちゃごちゃうるせぇな」
「そんな言い方しなくたっていいじゃん!」
「あのなぁ、こっちは心配して最善策としてこの手を取ってるんだぞ? じゃあ、他にいい手でもあんのか?」
「う、そ、それは……っ」
言い返せる言葉なんてあるはずもなく、口を結ぶことしかできない。
「だろ? 確かに、他の手もあるかもしんねぇけど、今、考えつくあたり、これが一番いいわけ。判ったな?」
「うん……」
裕樹君に手を引かれるまま、人の流れに逆らうように歩いていく。
きゃっきゃっ、ぎゃあぎゃあと騒ぐ学生の笑い声も、二次会行くぞと意気込むサラリーマンの声も、楽しそうな喧騒がどこか遠く聞こえてくる。
きっとそれは、この心臓の音のせい……。
ドキドキ──とひっきりなしに鳴るこの心臓の音が、掌から伝わって裕樹君に聞かれていないかと不安になるほどの大きな音。
こんなにドキドキしたのは、いつぶりだろう……。
「バーカ。目ぇ離したらどうすんだよ。お前、絶対に迷子だろ」
「そっ、そんな子どもじゃないもん!」
「ったく、ごちゃごちゃうるせぇな」
「そんな言い方しなくたっていいじゃん!」
「あのなぁ、こっちは心配して最善策としてこの手を取ってるんだぞ? じゃあ、他にいい手でもあんのか?」
「う、そ、それは……っ」
言い返せる言葉なんてあるはずもなく、口を結ぶことしかできない。
「だろ? 確かに、他の手もあるかもしんねぇけど、今、考えつくあたり、これが一番いいわけ。判ったな?」
「うん……」
裕樹君に手を引かれるまま、人の流れに逆らうように歩いていく。
きゃっきゃっ、ぎゃあぎゃあと騒ぐ学生の笑い声も、二次会行くぞと意気込むサラリーマンの声も、楽しそうな喧騒がどこか遠く聞こえてくる。
きっとそれは、この心臓の音のせい……。
ドキドキ──とひっきりなしに鳴るこの心臓の音が、掌から伝わって裕樹君に聞かれていないかと不安になるほどの大きな音。
こんなにドキドキしたのは、いつぶりだろう……。

