「俺、帰る」
樹君の姿が音楽に掻き消えるように、その場を離脱した。
誰もが何があったのかと唖然としている最中で、私は夢中で樹君の後を追いかけていた。
「ま……待って、樹君。待って!」
歩幅が大きいからか、それともスピードが早いからか──両方かもしれない樹君の歩いていく背中に大声を上げた。
樹君はどういう思いだったか分からないけれど、力なく止まる。
「ご、ごめんなさい……。えっと、さっきって……」
「何も言うな」
「え……」
「俺ももうそれ以上、言うことない」
そういう樹君の声はやっぱり冷たくて、そしてその背中は何だか悲しそうだった。
私はそれ以上、樹君の背中を追うことはできないし、許されなかったに違いない……。
樹君の姿が音楽に掻き消えるように、その場を離脱した。
誰もが何があったのかと唖然としている最中で、私は夢中で樹君の後を追いかけていた。
「ま……待って、樹君。待って!」
歩幅が大きいからか、それともスピードが早いからか──両方かもしれない樹君の歩いていく背中に大声を上げた。
樹君はどういう思いだったか分からないけれど、力なく止まる。
「ご、ごめんなさい……。えっと、さっきって……」
「何も言うな」
「え……」
「俺ももうそれ以上、言うことない」
そういう樹君の声はやっぱり冷たくて、そしてその背中は何だか悲しそうだった。
私はそれ以上、樹君の背中を追うことはできないし、許されなかったに違いない……。

