「両親が海外赴任することになってな。思い浮かんだのが、お前だってことだ」

「……裕樹君じゃないみたい」

「は?」

「だって、昔は優しかったよ」

なのに、話す口調が全く違う。

人は、10年で変わるものなのかな。


すると、裕樹君は鼻で笑った。


「人間は変わるモンなんだよ」

そう言って、裕樹君が私に近づいてくる。


「そういや、お前。俺が初恋の男なんだってな?」

「えっ!? なんで、知って!」

「おばさんが話してくれたんだよ」

お、お母さん……!!


母のおしゃべりもここまでくれば、ご立派なものだ。


「せっかくの再会なんだし、もっと喜べよ」

裕樹君の唇が、私の唇をふさいだ。


「ちょっ、裕樹君……っ」

強く押しつけられ、息がしづらい。


──うそ、舌が入って……!?


しばらくして彼はさらに激しいキスをしてきて、苦しさのあまり、涙があふれ落ちる。


「……~っ!!」

口をふさがれて出てきた言葉は、何を伝えたいのかわからない声。

とりあえず、ギブアップの合図のように力を振りしぼって、胸板を叩いてやった。


裕樹君はやっと唇を離した。

そんなときの頭の中は真っ白で、出るのは荒くなった息づかいだけ……。