「よっ」

ソファに座る男の子が、片手を上げて私にあいさつする。


テレビで見るような顔立ちが整った彼なんて、私の知り合いにいるわけがない。


「あら、やだ。忘れちゃったの?」

「え、……え?」

母が信じられないと言いたげな驚いた表情をするから、私はマジマジと男の子を見る。


「ひどいよなぁ。俺のこと、忘れるとか。──理央ちゃん?」

「え? も……、もしかして、裕樹君!?」

「やっと思い出した。……そっ、俺だよ、柿原裕樹」

裕樹君!?
なんか、すっごくカッコよくなっちゃってるんだけど……。


私が記憶している幼い彼は、女の子に負けないぐらいにかわいかった気がする。


「おばさん。理央をちょっと、お借りしていいですか?」

「いいわよ。……あ。私、買い物して来るから、ごゆっくり」

お母さんはなぜかウインクして、買い物に出かけていった。


「ほ、ホントに裕樹君?」

「しつけーな。俺だっての」

引っ越した彼が、どうして今になって、この地に帰ってきたんだろう。


「な、なんで、家に?」

「俺、一緒に住まわせてもらおうと思ってな」

「えっ!?」

「ちなみに、もう了解済みだ」

一緒に住む!?
何それ、どーいうこと!?