「ほら。拭き終わった」

「あ、ありがとう……」



裕樹君の手がやっと離れて、ほっと一息つく。



「ご、ごめんね。汚しちゃって」

「気にすんなよ。とりあえず、スカートにつかなくてよかったな」

「そ、そうだね……」



ただ、そのままのハンカチでは手を拭くことなんてできはしないから、私はあとで裕樹君に予備のハンカチを渡すことにした。



「んで……」



裕樹君は何やらはぁーっと盛大にため息をついて、弥生たちを睨むように見つめた。


私は、ん? と思いながら、裕樹君にならってその二人を見る。

そして、同時に悟った。



「お前らは何、ニヤニヤしてんだよ?」



二人とも、こちらを見て、ニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべていたのだ。

私はさっきのあの場面を思い出して、ただでさえ恥ずかしいと思っていたのがさらにゲージが上がって、どこかに隠れたい気分に襲われた。



「いーや? 別にぃ?」

「ただ、すごい仲いいなって思っただけだよー」

「何かお前ら……。ムカつくな。くそ、リア充、爆発しろっつー気持ちがすげー判るぞ、今なら」

「はいはい、判りましたー。よそ者は退散するよ。──行くぞ、弥生」

「うん」