裕樹君の声に我に返ると、弥生はうつむきながら真悟君に連れられて戻ってきたのだ。

真悟君の手を見ると、弥生の小さな手が握られていた。



「弥生! 心配したんだよ!?」

「うん……ごめん、理央」

「その様子だと、大丈夫みたいだな」



弥生に近づくと、うつむいた顔が微妙に赤いことに気がつく。

泣いていたせい、かと思ったが、そうではない。



「そっか……よかったね」

「オイオイ……。二人とも、こっち見てニヤニヤすんなよ」

「え? してないよ。ねえ、裕樹君?」

「そうだ、してねえって」



お互い顔を見合うと、確かに口元が上がっていた。

そして、同じ顔してるとは思ってもいなくて、つい笑い出してしまう。



「ダメだよ、裕樹君。笑っちゃ……あはははっ」

「お前も笑ってるだろ! ふ……はははは!」

「お、お前らなぁ~!」



怒った真悟君の顔は真っ赤で。

弥生は下に向いていた顔を上げて、真悟君の怒る姿に一緒になって笑っていた。