あ、遊んでる。
絶対に遊んでる……。


抱きしめられたままだから、様子がよくわからないけど、上からクスクスと小さな笑い声が聞こえてくる。


「懐かしいな。よく遊んだよな、俺たち」

ふと、静かに話し出した裕樹君。


「お前、今、どうなんだよ」

「え?」

「好きなヤツ、いるの?」

え?
な、何、いきなり?


突然の質問に、動揺が隠せない。


「いるの、いないの。どっちなんだよ」

「い、いる……よ」

「へえ。どんなヤツなんだよ」

「や、優しくて、カッコいいよ? サッカー部で同い年なんだけど」

なんで、こんな話をしてるの?
別に、私が誰を好きになろうが、どうでもいいんじゃないの?


突然、好きな人の話をさせられたから?

よくわからないけど、怒りのゲージがぐんぐん上昇していく。


「あっそ」

私の話がしてから黙った裕樹君は、しばらくしてそっけない返事をすると、手が離れるとぬくもりも消えた。


気づくと、裕樹君はすでにふとんに戻っていて、もう寝息を立てていた。


なんだったの?

いきなりしつこく質問してきたかと思えば、そっけない答えを返して寝てしまうなんて。

裕樹君のことが──わかんらない。


目覚まし時計を確認すると、時刻は22時半だ。


──寝なきゃ。

そう思って、ふとんを頭上まで引っ張って、中にもぐる。

そして、静かに目を閉じた。


まだ背中には、裕樹君のぬくもりが残っていた。