ここは、稜栄学園高等部。


県内でも名の知れたレベルの高い優秀な高校。


だからなのか、校則はゆるく、生徒による活動については生徒に任せっきりになっていた。


生徒の意見は生徒会でまとめ、そこで決まったことはほとんど通るようになっていた。




そして今、奇妙な大声を出していたのが、高等部生徒会長、鳳来 月華(ほうらい げっか)。


何があっても特に深く考えない、いつも明るい性格でやりきってきたかなりの楽天家。


それは、無邪気な少年のような顔と動き、頼りなさそうな細っこい体からも現れている。


新入生はみんな、『何でこれが生徒会長?!』と不安に思う。


だが、彼を知っていくうちに、『なるほど、彼だからできる』と納得させられてしまうのだった。



月華はいつもより更にうかれていた。


程が過ぎるくらいにうかれていた。


三階の二年の階段を飛ぶように下り、二階の廊下と南校舎をつなぐ連絡通路を駆ける。


普段より更におかしな生徒会長に、周りはみんな遠退いていく。


駆けていく先に月華はある女子生徒の姿を見つけた。


「あっ、星七」


月華に気付かず友人と話している女子生徒。