「…ごめん。自分で帰るから」

『バカ言うな。雨降ってるんだぞ』

「ごめん。今すぐ帰るから」

『ダメだ。言え』

「…ごめん。言えない」

あたしとお兄ちゃんが言い合いしていると、

京介にケータイをとられた。

「東町で一番高いビルの最上階の一番奥」

それだけ言うと、電話を切り、あたしにケー

タイを返した。

「なんで言っちゃうの!?」

「…お前、俺らに気ぃ使うんじゃねぇよ」

「は…なんで?」

気、使っちゃダメなの?

「…仲の良い奴に、気なんか使わなくていい

んだよ、バーカ」

…顔赤くして、そんなこと言うなバカ。

寝起きの時、あたしに変なことしたくせに、

なに顔、赤くしてんだ。

「でも…お兄ちゃんがみんなに、変なこと言

ったら悪いし…」

「んなの、言われて気にする奴はいねぇよ。

言われ慣れてんだ」

…そんなこと、言われ慣れないでよ。

「…京介たちは、みんな良い人だよ。みんな

優しいもん」

「…お前がそう言ってくれるだけで、俺らは

いい」

「…うん」

…ていうか。

「京介の両親、なにやってるの?」

こんな大きな家に住んで。

「…あぁ、親父は外科医だ」

「外科医!?」

だから、こんなに大きいのね…