翌日も少女はいつもと変わらぬ一日を過ごした。
しかし、いつもと違う所が一つ。
『あ、いたいた。』
それは優の存在だった。
優は息をきらせ少女のもとへ走って来た。
『それで、私の名前は決まったのか?』
少女は疲れきっている優を見てため息をついた。
『うん・・・。決まったよ。』
『ほぉ、それは楽しみだな。』
優が顔を上げると、少女は少しおもしろそうな顔をした。
『凛音・・・。月華 凛音(つきはな りんね)にした。』
優は自信ありげに言った。
『月華・・・凛音・・・。』
『そう、僕の第一印象。凛とした音のように澄んでいて、月に照らされた華のよう。どうかな・・・?』
優はさっきの自信とはうらはらに急に不安そうな表情になった。
少女はしばらく悩んでいたが、突然フッと笑うと
『おもしろい、それにするか。』
そう優を見た。
『じゃぁ、凛音。僕も優でいいから。また明日も来るね。』
優は嬉しそうに凛音に手を振って帰って行った。
『月華 凛音・・・か。おもしろい名前だな。』
凛音はなんだかんだでこの名前を気に入ったようだった。
(あんな雰囲気の人間は初めてだ。あの男なら・・・私を変えてくれるかもしれないな・・・。)
凛音は実はずっと孤独な自分が嫌で変えたかった。
(これは賭だ。ならば私は変えてくれる方に賭るとしよう。)
凛音は少し欠けてた月を見上げた。
続く

