桜が咲き、草木が生い茂りそして色づき、雪が降る。  

このように季節が巡り、時代は次々と変わっていく。 

人はこの時の流れの中生まれ、老い、死んでいく。

しかし、この時の流れに添わない者が世界でただ一人いた。

それが   ----神-----

神はこの世界と共に生まれ、時代の移り変わりや人の生き死にをずっと見てきた。

この世で唯一、死をむかえない者であった。

そしてこれは、神である少女と一人の少年の物語。

時はあの恐ろしい事件、「第二次世界大戦」の三年前にあたる。

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『明日は満月だな。』

一人の少女が空を見上げそうつぶやいた。

そして近くの大きな桜の木にのぼった。

季節は春。

桜は満開だった。

『まぁ、私には季節も月の満ち欠けも関係ないがな。』

少女は少し悲しそうに俯いた。

そう、この少女がこの物語の主人公である神の少女である。

少女がいるのは「時咲神社」という神社。

神は決まった場所にとどまらず、各地を転々としていた。

そしてこの神社は彼女にとって忘れられない思い出の場所となる。

翌日、少女は食料を求め山に出ていた。

神もお腹は減る。

しかし、お金があるわけでもないので毎日こうして食料を探していた。

その後、空の上から地上を見下ろした。

これは神の体質の一つで風を使い浮くことができるのだ。

これが少女のいつもの一日である。

そしてその夜

『やはり、満月は幾度見ても美しいものだな。』

少女は昨日と同じように桜の木にのぼり空を見上げた。

それからしばらく少女が月を眺めていると、神社の鳥居の方に人影が現れた。

人影はどんどん少女に近づき、ついに桜の木の下まで来た。

少女はすぐにそれに気づき、人影をよく見た。

人影は一人の少年だった。

『今夜は満月かぁ。』

少年は木の根本に腰掛け、少女と同じように月を眺めた。