つまりは智の実の妹ね、とアスカ先輩は付け加える。

 私は足元の地面がぐらりと傾ぐのを感じた。

 智先輩は妹さんと同じ名前を黒い仔猫につけていたのだ。

「本当はハルカっていうの。都築 杳。みんな縮めてルカって呼ぶけどね。本当に可愛い子なのよ。面接禁止されてるから数年会ってないけど。――六歳まで生きられないと言われていたのよ」

 確か小学三年生だと聞いた。つまり今、八歳か九歳ということになる。

 ――文化祭に妹を連れて来ようと思うから、そのときにでも。

 面会禁止になるくらい妹さんの病状が酷いというのなら。

 あのとき智先輩が言ったことは嘘だ。

 文化祭になんて来られるはずがない。

「……ルカって、私てっきり猫のことかと」

「猫? ――そういや、この前の猫が引かれた事故もあいつにとってはショックかも。思いっきりトラウマ引き起こしそうだもんね」

「トラウマですか?」

 私が聞き返せば、アスカ先輩は大きく頷いた。

「そう。両親のときも智は目の前で見ていたっていうから」

「両親……?」

 私がオウム返しに訊くと、アスカ先輩は大きく息を吐いた。