描かれた夏風

 女というのは群れる生き物だ。

 お弁当を一人で食べなくてはならないのは、多分つらいことなのだろう。

 ――孤独と仲の良い自分には、彼女の気持ちなんてよくわからないけれど。

 彼女はその日から毎日律儀に裏庭へ通ってきた。

 暇つぶしに話しかけてみると、どこか緊張したような声が返ってくる。

 うじうじしてないところと、一人で行動できるところが気に入った。

 黒猫のルカと、西口友絵。

 一人と一匹から、自分はとても懐かれている。

 自分なんかの隣にいて何が面白いのかわからないが、好かれて悪い気はしなかった。

 しばらく一緒にいて、彼女の絵が優しい理由が何となく分かってきた。

 西口友絵は可愛い子だ。仕草や行動が女の子らしい。

 それも計算してやっているのではない、自然で嫌みのない女の子らしさなのだ。

 彼女が広げるスケッチブックに何気なく目をやる。

 一度も見たことないのに、なぜか懐かしい景色。

 それはとても愛しいものに思えた。

 彼女はいつも何かに感謝している。

 その対象は食べるものであったり、家族だったり、アスカであったり、自分だったりした。