描かれた夏風

 その日から、暇な時間を桜の下で過ごすようになった。

 人懐っこいもので、ルカは呼ばれたらすぐに来る。

 まるで犬みたいだと思った。

 ルカ、という名前が気に入っているらしい。

 どこか複雑な気分だ。

 しばらくして、子猫がもう一匹増えた。

 一年生らしい女子生徒が、自分も裏庭に来ていいかと訊いてきたのだ。

 学校の敷地という公共スペースなのだから、許可なんていらない。

 変わったことを言う子だと、そう思った。

 胸元の赤いリボンに、少し短いスカート。肩の上で揺れる黒のセミロング。

 一年生としての立場上控えめだが、それなりに上手く制服を着こなしている。

 これといって特筆すべきところもない、ごくごく普通の女の子だった。

 可愛いか不細工かといえば可愛いかもしれないが、誰もが振り返るってほどじゃない。

 だから名前を聞いたとき、正直言って少し驚いた。

(この子が……?)

 西口友絵だというのなら、事情は大体察せた。

 アスカや校内の噂によると彼女は今、村八分にされているらしい。