――足元にも及ばない。

 それは確かに私の本心だったのに。

 アスカ先輩の表情には、私への憎悪がありありと浮かんでいた。

「……敵だ、ってみんなの目が言っているんです。私が何か言うたびに嫌味みたいにとられて、そういうのって、なんだかすごく、悲しいです」

 私は震える声で不満をぶちまけた。

 ――これまで誰にも言えなかった、聞いてもらえなかったこと。

 智先輩は少し淋しげに微笑んで、私の頭をポンポンとなでてくれる。

「よしよし……。でもね、友絵ちゃんがこれからも絵を描いていくのなら、何かを成し遂げようとするのなら、戦わなくちゃならないんだよ」

 智先輩にしては珍しく、暖かさのない声だった。ほんの少しだけ、怖いとすら思えてしまう。

 でも私にはわかった。厳しい口調は、優しさの裏返しだ。

「上手く言えないけど……羨みや妬みは、憧れと紙一重なんだ。そういうものとの戦いは、自分を成長させるためのチャンスだから」

「……はい。そう、ですよね……」

 頬を熱いものが伝い落ちた。泣き顔を見られたくなくて、私は必死で涙をぬぐう。