アスカ先輩だって、賞を取ると予想されていた生徒の一人がだった。

 アスカ先輩は私を憎んでもおかしくない立場にいる。

 それなのにいつも笑顔で話しかけてきてくれるのだ。

 絵が巧いだけじゃない。アスカ先輩は本当に大人だ。

 私がアスカ先輩に勝てるところなんて、一つもない。

(何でアスカ先輩じゃなくて私なんだろう……?)

 これでは、贔屓だと噂されても仕方なかった。

「じゃあ、友絵ちゃんは賞を取りたくなかった?」

 智先輩の質問に、私は少し考えてから答える。

「賞を取れたことは嬉しいです。でも私よりも相応しい人がいたのにと思うと嬉しくないです」

「複雑だねー。じゃあ、自分には賞をもらう資格がないって、そう思っているんだ?」

 まさにその通りだった。誰だってそう言うだろう。

「はい……私、芸術科に仲がいい先輩がいるんです。でも、笑顔で話しかけてくれるのに、最近は怖くて」

 ――私なんてアスカ先輩の足元にも及ばないですよ。

 数日前にそう言ったとき、私はアスカ先輩との間にいつの間にか深い溝ができていたことに気づいた。