それが私の心からの願いだ。

 隣に立つ人の顔を見る。いつもの柔らかい笑顔で、智先輩はゆっくりと頷いてくれた。

(……諦めかけた時、アスカ先輩にも隣で微笑んでくれる人がいたら良かったのにな)

 そうすればきっと、こんなことにはならなかった。

 だから隣にいてくれる人がいる私は、きっととても幸せだ。

 二人並んで講堂を出ると、文化祭はまだ続いていた。

 真由や友達の姿は見当たらないが、探す気になれない。

「――手、つないでいいですか?」

 私が伏し目がちに聞くと、智先輩は笑顔を崩さずに頷いてくれた。

 大切なものでもあるかのように、そっと手を重ねる。

 心臓がバクバクして、破裂しそうだった。

 真由には悪い。でも今だけはこうしていたかった。

 出店が並ぶ喧騒に満ちた人ごみの中を、ゆっくりと進んでいく。

 ここにいる生徒たちみんなのドラマを紡ぎあげながら、文化祭は少しずつ終わりに近づいていくのだった。


 ――あの日から、あっという間に数日が経って。

 私は友達と一緒にお昼の時間を過ごしていた。