私が当然のように大きく頷くと、智先輩は幾分呆れ顔になった。

「盗作されたんだよ。怒らないのかな」

「怒ってますけど、それよりも、悲しいです」

 嫌いな風景画を描くことを強制されて、アスカ先輩は精神的に追い詰められていたのだろう。

 そんなアスカ先輩に相談された時、私は何も言えなかった。

 もしあのとき私が心を軽くするような言葉をかけられたなら、こんなことにならなくて済んだ。

 普段のアスカ先輩だったら、盗作なんて絶対に拒否していたはずだ。

 そう思えば思うほど、何もできない自分の無力さが悲しい。

「お昼の代表発表までにはどうにかしないと」

 どうにかと言っても、具体的な方法なんて何一つ思いつかなかった。

 じっと何かを考えていたらしい智先輩が、静かに切りだす。

「……ひとつ、できることがあるにはあるんだ」

 言ってもいいのか悩むような様子で、智先輩はゆっくりと言葉を継いだ。

「あの名前プレートを友絵ちゃんの名前に差し替えられるよ」

「え?」

 それは思いも寄らぬ提案だった。