野間野アスカ、と。

 私の絵の下には、そう書いたプレートが貼ってある。

 行き交う生徒たちの声は、まるで荒波のようにうるさかった。

 ざわざわと頭の中に得体の知れない黒雲が広がっていく。

 手足がジンジンとして、ここに立っているという感覚がなかった。

(どういうこと……?)

 何かの間違いだ。

 そう自分に言い聞かせる。

 いてもたってもいられなくなって、私は走り始めた。

(何かの間違い……だよね)

 盗作という単語が不意に頭をよぎる。

(まさか、でも、そんなことって)

 そんなの、考えたくもなかった。

「先生! 難波先生ッ!」

 文字通り職員室に飛び込む。

 人数こそは少ないものの、そこにいた先生たちが私に注目した。

「に、西口!」

「先生、講堂に展示してある絵のことなんですけど。私の絵に」

「ち、ちょっとこっちに来てくれ!」

 勢い任せの私の抗議が始まる前に、先生は話を途切れさせた。

 他の先生に聞かれたくない――というのは私の穿った見方だろうか。

 面談用の小狭い個別ブースに連れて行かれる。