毎日絵と向かい合っていれば、自ずと自分のレベルも分かってくる。

 そして少し観察してみれば、周りのレベルもつかめた。

 絵だけを見つめて生きてきた人たちの中で、選ばれるのはたった三人だ。

 まだ希望を捨てていない一年生は、私だけかもしれない。

「アスカ先輩と……山本先輩か島崎先輩かどっちかは入ると思うの。私は島崎先輩に千円。友絵はどう?」

「やめてよ、そういうの。これは遊びじゃないんだからね」

「あはは、ごめんごめん」

 全く反省していない様子で真由は頭をかいた。

 睨みつけてくる上級生たちの視線には気づいていないようだ。

 二、三年生はみんな目つきが鋭い。神経質に周りの様子をうかがっている。

「では、これより芸術科を代表する三作品の展示を始めます」

 私の担任でもある難波先生が厳かに言い放った。

 ざわついていた生徒たちが、途端にシンと静まる。

 鍵を開ける先生に視線の束が集中していた。

 芸術科の生徒みんなが、固唾をのんで様子を見守っている。

 小さな金属音がして鍵が開いた。先生が扉を押し開けていく。

 視線は一斉に扉の向こうへと向けられた。