優しい声色とは裏腹に、まったく笑っていなかった。 私はゆっくりと窓に向き直り「聞こえないフリをする人のフリ」をした。 思わず「はい」と言いそうになった。 …いや、言えるはずはない。 もう5年になる。 私は、5年の間、私の声を聞いたためしがない。 どうやら私の心に作られた壁は、喉にまで感染したみたいだ。 私の声は、もう一生、でることは無い。