【完】サクラのうた ‐桜庭 大雅‐



全員がビクッと体を震わせる。


「たいが、くん…」


そして全員が、「しまった」と言うような顔で俺を見て、そしてあの子から2歩離れる。




「……大丈夫?」

「あっ…はい…」

「………」


…泣きそうな顔してんのに、どこが大丈夫なんだよ。

まぁ…、先輩に何かされたとしても、言いにくいよな。




「…あのさ。コレ、俺の女だから」


…ほんとはこの子の名前すら知らないけど。

でも、そう言っちまった方が楽なような気がした。


「この子になんかあったら、女の子だろうと容赦しないからね?」


作り物の最上級の笑顔で女の子たちを見て、彼女の手を引く。




……。




「…ったく、1年生が3年のエリアに来るなんて無謀だよ?」


廊下を進みながら声をかける。と…、


「…ごめんなさい。
でも、他に方法が無くて…」


…うん、確かにその通り。

俺がいつまで経っても携帯を返しに来なかったら、そりゃあ自分から来るしかないよな。




「あー…、ごめん、俺が悪かった」


この子が謝る必要なんて無い。

全部、俺のせい。




「…んっと、迷惑かけたお詫びにお昼ご飯ご馳走するよ」


…なんて、言ってみたら。