【完】サクラのうた ‐桜庭 大雅‐



柔らかな笑顔、そして温かな言葉。

それを見て聞いた瞬間に、思う。




「…キミは、馬鹿だよ」


…なんで「笑ってください」なんて言えるんだよ。

俺はずっと、キミのこともキミに言ったセリフも忘れてたのに。


なのに、その俺を見て笑ってるなんて…、キミは本当に馬鹿だ。




「いっつも馬鹿やってる先輩に言われたくありませんけど?」


…ははっ。




「…ほんとにキミは馬鹿だよ」




…でも、


好きだ。






「ねぇ綾ちゃん、今から何か食べに行こうか」

「え? 二人で、ですか?」


「そ。親睦会ー。
一緒にメシ食って飲んでこそ仲が深まるって言うじゃん」

「…なんか、オジサンみたいなこと言いますね」


「あはは、でもそれが“俺”だから」


これが俺。

そう言った時、綾ちゃんはちょっとだけ心配そうな顔をした。




「あんまり、無理しないでくださいね」




俺たちの間を、サァッと風が吹き抜ける。


「…大丈夫だよ」


無理なんてしない。

いや…、キミの前なら多分、“無理する必要がない”んだと思う。


…綾ちゃんは本当の俺を知ってくれてる。
だから大丈夫。

そんな気がした。




「あ、今度龍輝の彼女紹介する。
俺が好きだった子、て言うか今でも好きだけど」

「…なんかそれって、とっても複雑な気分になります…。
私はその人の代わりでしかないのかな、と…」


「あぁそれは違うよ。
真由ちゃんのことは好きだけど、でも今“愛しい”って思うのは綾ちゃんだからね」

「…やっぱり複雑です」

「あはは、ごめん」




ごめんね綾ちゃん。


スキって難しいね。

言うのは簡単だけどさ、でも、「想い」を伝えるのは難しい。


だけど、

難しいからこそ人は人を好きになって、そして愛していくんだよ。




…なんてね。