【完】サクラのうた ‐桜庭 大雅‐



「…中3の時に俺、キミに“好きな子が居る”って言っただろ。
だけど俺、本当は好きな子なんて居なくて…、ただテキトーなこと言ってやり過ごそうとした。

…あの時の言葉は、全部嘘なんだ」


…綾ちゃんに言ったことすら忘れてた。

忘れてたけれど、でも…、でもその言葉で俺は、綾ちゃんを傷つけた。
…傷つけたし、そして今まで苦しめてた。


「…ごめん。 本当に、ごめん」


深く深く頭を下げて、ギュッと目を瞑る。

今の俺には、こんなことしか出来ない…。




「………」

「………」


…無言のまま、時だけが過ぎていく。

頭を下げる俺と、立ち尽くしたままの綾ちゃん。
異様な光景の中で、綾ちゃんは小さく息を吐いた。




「私は、先輩の言葉は変わるきっかけに過ぎなかったと思ってます。
“先輩を見返してやろう”って思ったからこそ、今までやって来れたんだと思います」

「………」

「同じ高校に入ったのもそれが理由。
先輩よりも良い男を見つけて、先輩よりも幸せになってやる!!って思って。

だけど…、先輩と再会した瞬間に全部吹っ飛んだ。
私、今でも桜庭さんが好きだって気付いて…、そばに居たいって思った」


柔らかなその声を聞きながら、体をゆっくりと戻す。


…そこで見た綾ちゃんは、笑ってた。




「桜庭先輩」


俺の手に自分の手を重ねて、そして言う。




「先輩が謝る必要なんて無いです。
だって私、先輩とまた話せることが出来て嬉しいから。

だから、先輩も笑ってください」