【完】サクラのうた ‐桜庭 大雅‐



「…えっと、どういうこと?
朔ちゃんが、あの子の相談相手…?」

「そう。中学の時、お前のことを色々相談されてた」

「……それって…」


「“どうすれば体育館裏から桜庭先輩を撃退出来ますか?”が最初だったかな」


……それかよ。




「その後ちょくちょく会って話してて、大雅の苦手な物とか教えてた」

「…なんじゃそりゃ」

「ダンゴ虫ぶちまければ逃げるよ、って」


「あー…うん、そりゃあ逃げるわ…」

「まぁあの子も虫が苦手らしいから、それは却下になったけど」


昔を思い出しながら笑う朔ちゃん。

それから遠くを見てふっと息を吐き、俺を見る。




「“桜庭先輩はどんな女性が好みなんでしょうか?”って聞かれたのが最後だったかな」

「え?」

「その言葉に俺は、“本人に聞いてみれば”って答えた。
“俺はまだ大雅の全部を知ってるわけじゃないから”って付け加えてね」


……あー…。

そっか…、“あの時”の言葉はコレだったんだ。




「…今更思い出してどうすんだよ馬鹿」

「え?」

「……んや、こっちの話」


…“あの時”…――、保健室に女の子を送り届けた後、あの子は俺に言ったんだ。




“桜庭先輩は、彼女とか作らないんですか?”




そんな風に聞いてくるなんて珍しいな、って思ったんだ。

だけど俺、いつもみたいにテキトーに返したんだよな…。


“彼女は居ないけど好きな女なら居るよ”って、好きな子なんて居ないくせにそう言って笑ったんだ。


「………」




“…その人って、どんな人?”




……その言葉に俺は、なんて答えた?