【完】サクラのうた ‐桜庭 大雅‐



……あの日、いつものように体育館裏に居た俺は、テニス部の女の子たちに“ちょっかい”出して笑ってた。

そこに現れたのが、サクライ アヤ。




――「みんな、早く戻った方がよくない…?」


うん、確かそんな感じで他の子に言ってた。

で、みんな行った後に、その子に言われたんだ。


――「もう、テニス部のみんなに声をかけないでください」


サクライ アヤは俺を睨みながらそう言って、あっという間にテニスコートへ戻っていった。




「…あん時、他の子が“サクライさん”とか“アヤちゃん”とか呼んでたんだ。
だから、“あぁサクライ アヤって名前なんだ”って知って…」


……でも――、




「…でも、違うよな…」


――…俺の知ってるサクライ アヤと、さっきの桜井 綾ちゃんは、違うんだよな…。