「涼に触らないで!
離れて!離れてよぉ!」
何かもう、必死過ぎて気持ちがぐちゃぐちゃだった。
子どもが駄々こねてるみたいだって分かってる。
こんな取り乱して、大人げないって分かってる。
…だけど、冷静では居られなかった。
涼が他の女と…って思ったら悲しくて、
そんなの絶対に嫌で……
今まで抑えていたものが爆発したみたい。
「ちょ、いい加減にしろよ、この…」
その時、アユミの手が大きく振りかぶった。
“ぶたれる…!”
そう思って、私は咄嗟にギュッと目をつぶる。
だけど何も起こらなくて、私はそっと瞳を開けた。
「はっ、離して…!」
涼がアユミの腕を掴んで止めていた。
その表情はどこか呆れているようで、小さく息を吐く。
「アユミ先輩…
こいつ一応俺の女なんで、手出さないでもらえますか?」
涼の言葉に、彼女の顔がカッと赤くなった。
“涼……”
「ばっ…バカじゃないの?!
何なのよあんたたちっ…勝手にすれば?!」
アユミはそう言って涼の腕を振りほどくと、教室を飛び出していった。
アユミが廊下を走る音がだんだん小さくなり…
聞こえなくなった途端、私は全身から力が抜けたようにその場にしゃがみこむ。
「……はぁぁ〜〜……」
ずっと息を止めていたわけじゃないのに、私は大きく息をついた。
……わ、…私、何やって……

