……なに……?
…今、何て言った……?
私のことはともかく、あの子…
涼をモノにするって…
涼が、狙われてる??!!
た、大変!!
あんなおっぱいに迫られたら、涼だってきっと我慢出来ないよ!
そんなのヤダ!!
私はまたその場から走り出した。
“モタモタしてると、別の女に涼ちゃんさらわれちゃうかもよ?”
お姉ちゃんの言葉が頭に反芻する。
…やだ、やだよそんなの。
涼、私を“初めての女にする”って言ったじゃない…
私の初めて、俺がもらうって言ったじゃない!
男なら、約束守りなさいよ…!
私は涼を探して、大学校内を走り回った。
途中、また涼の友達に出くわす。
「あれ、彼女さんまだ居たんすか?」
「涼は?!涼はどこ?!」
私は飛びつくように聞いた。
「涼ならあの後彼女さん追いかけてって…会いませんでした?」
「え……」
うそ、すれ違い…?
「お待たせ…ってあれ、涼の彼女さん」
その時、もう1人の友達がやってくる。
「あ、俺ユージって言います。コイツはヒロキ。
涼とは幼稚舎から一緒で、くされ縁みたいなもので」
「…あぁ、私は…」
「咲さん、ですよね。涼がそう呼んでたから」
「うん…そう」
「涼とは付き合い長いけど、さっきみたいな涼、初めて見ましたよ」
「え?」
私は2人の顔を見た。
「その、なんていうか…照れてる?っていうか…
普段どんな女の子の前でも表情変えないあいつが、咲さん追いかける時はすごい形相だったしな」
「そうそう、珍しいもん見たよな」
ユージくんとヒロキくんは顔を見合わせて頷いた。
……そうなの?
きっとユージくんたちは、私の知らない涼をいっぱい知ってる。
だけど、私しか知らない涼もあるの…?
私にしか見せない表情もるの……?
「そういや涼なら、さっきアユミ先輩に呼び出されて、実験棟に行くって言ってたけど」
そのヒロキくんの言葉に、ユージくんが驚いて声をあげた。
「えっ、お前、何でそれ早く言わねぇんだよ!
咲さん、探してたのに」
「あ、そうだったんすか?スミマセン…」
「てゆーか実験棟って…ヤバくね?!」
「どうして?」
私はユージくんの顔を見上げて聞いた。
「いや、あそこは、夕方になるとほとんどひと気がなくなるから…
カップルがコッソリHするのに穴場だってセンパイが……」
「?!」
え、え、え、エッチ?!!
校内で、コッソリ、え、え、えーー?!
気が付いたら私は、また走り出していた。

