…知らない!
もう知らない!!
なんなのよ!
なんで“俺の女”って言わないの?!
あのアユミ先輩の前じゃ言いたくないわけ?!
私が彼女だって、言いたくない理由でもあるの?
……あの子、可愛かった。
私なんかより全然…
そりゃ、ミスK大にも選ばれるわけだ。
女子アナとかになれちゃうわけだ。
この大学に通うくらいだから、きっと頭も良くて…
高卒の私とじゃ大違い。
あんな可愛くて完璧な女の子がそばにいたら、そりゃ涼だって……
「はぁ〜…もう最悪…」
私はベンチに座りこんだ。
大学の敷地内を走り回ってたら、出口が分からなくて完全迷子。
きた道も、ここがどこかもさっぱりわからない。
こんな広くて、学生の子も迷わないのかしら?
みんな頭良いから迷子になんてならないの?
…やだ、私ってば卑屈っぽい。
こんな風に思いたくないのに……
「えー、で、どうだったの?涼くんの彼女って」
突然の声に、私の心臓が大きく飛び跳ねた。
見ると、私のすぐ後ろをさっきのアユミって子とその友達らしき女の子2人が通り過ぎるところだった。
私は思わず、気づかれないように顔をうつむかせる。
「全然フツー!
もっとすごい美人とか想像してたけど、なんか普通すぎて拍子抜けしちゃった。
私の方が全然上って感じ」
「やだー、ヤな女!」
「でも涼くん、アユミが誘っても彼女がいるからの一点張りなんでしょ?」
「逆に良かったわ、どんな彼女か見れて。
私、絶対涼をモノにする。私のテクにかかれば、涼だって落ちるに決まってるわ」
「可愛い顔して、アユミってホント怖いよねー」
「ホントホント、これでどれだけの男が騙されてきたか!」
甲高い笑い声がだんだん遠くなっていった。
私は恐る恐る、顔をあげる。

