Sugar × Spice Ⅲ〜ハジメテは年下幼馴染〜



「咲ー、ちょっと」


その時、お母さんが階下から呼んだ。


「なに、どうし…」

階段を降りると、玄関先に涼のおばさんが立っていた。


「真由美さんが、咲に頼みたいことがあるって」

「ごめんねぇ、咲ちゃん、お休みなのに。

涼が今日提出しなくちゃいけないレポート、家に忘れていって。

届けてくれって連絡あったんだけど、私これから町内会の集まりに行かなくちゃいけなくて。

咲ちゃん、これを涼に届けてくれないかしら?」


そう言っておばさんは、大きな封筒を差し出した。


「え、わ、私…?」

「いいでしょ咲、どうせ家でゴロゴロしてるだけなんだから」

お母さんが横から口を出す。


「わ、分かりました…」

「ごめんねぇ。じゃ、これよろしくね。

K大、行き方分かる?」

「あ、はい、大丈夫です」


私は封筒を受け取ると、涼の通う大学へ向かった。









ーーーーーー…




“すご……ここが涼の大学…”


涼が通う大学の門前で、私はポカンと口を開けた。


大きくて、立派な門。

土曜なのに、学生と思われる若者が行き交う。



“大丈夫かな…私、浮いてない?”



私は肩身のせまい思いで門をくぐった。

大学敷地内は想像以上に広く、迷路のようだった。

私は怪しまれない程度に辺りを見回す。


…涼、どこにいるんだろう?


電話しても出ないし…まさかまだ怒ってる…?


とりあえず私は敷地内を進んだ。

どこかに受付みたいなところがあるはず。

そこで涼を呼び出してもらうとか、レポートを預けるとかすれば良いんだ。






「あれ?涼の彼女さんじゃないっすか?」


その時。



突然声をかけてきたのは、あの日涼の家を訪ねてきた涼の友達だった。