「ふふふ〜嘘よ、嘘!
やだぁ、咲!涼ちゃんとついに?!しちゃったの?ねぇ!」
「いたっ…ちょ、お姉ちゃん」
お姉ちゃんが私の肩をバシッと叩くと、嬉しそうに聞いた。
「ねぇねぇどうなのよ!お母さんには黙っててあげるから、お姉ちゃんには聞かせなさい〜」
「いや、だ、だから、涼とはまだしてないってば」
私は慌てて首を横に振った。
「なんだ、そうなの?」
「なんだって…だってまだ付き合って2カ月とかだし、そんな…」
「私、優ちゃんとは付き合うことになったその日にしたよ?」
「えっっっ?!」
私は驚いてお姉ちゃんを見た。
なんでこの人、そういうことサラっと……
「私たちはホラ、幼なじみとしては付き合い長かったしね。
だから“やっと”って感じだったよ?
“やっと優ちゃんに触れて良いんだ”って…
私はずっと、優ちゃんに触れたかったんだってその時初めて自覚したんだけどね」
“…でもね”
その時、お姉ちゃんの表情が曇る。
「…私は優ちゃんが“初めて”だったんだけど、優ちゃんはそうじゃなくて。
当たり前よね。優ちゃんは私よりも年上で、モテてたし…それまでに付き合ってた人がいてもおかしくないもの。
だけど、私よりも優ちゃん自身が気にしてた。
優ちゃん、私のこと想いながら他の人としたこと、ずっと後悔してるんだって」
……そ、そうだったんだ。
男の人も、そんな風に気にしたりするの?
初めては好きな人とって…そんな風に思うの?
それとも、優兄ちゃんだから…
「だって男の人って仕方ないじゃない?
女とは身体の仕組みが違うんだもん。
心とは別の所で、身体が反応したりする。
…でもね、私もやっぱり優ちゃんの初めてになりたかった。
一緒に、初めてを経験したかった」
「お姉ちゃん……」
「ま、今更そんなこと気にしてないんだけどね。
でも、咲には同じ思いして欲しくない」
「え?」
よいしょと立ち上がるお姉ちゃんが、私を見てニヤリと笑った。
「モタモタしてると、別の女に涼ちゃんさらわれちゃうかもよ?
涼ちゃんの初めて、他の人に取られて良いの?」
そう言ってお姉ちゃんは部屋を出ていった。
……このままだったら、涼が、他の女にさらわれる…?
涼の初めてが、他の人に奪われる…?
そう思ったら、なんか言いようのない不安が襲ってきた。
まさか、そんな涼に限って…
だって涼は、私のこと好きだって…
私以外は興味ないって……
だけど、本当は不安でたまらないの。

