ー黒陽ー


そこには、私に突き飛ばされ
痛そうに倒れる男の子がいた


…動かない、けれど


「この少年は、あなたがいなければ、あなたの変わりに命を落としたでしょう」


「……」




そうだ


私が飛び出した
子供を助けようとしたから


そんなことしなければ、私は死ななかった



だけど


「体が、勝手に動いた…それで、ヒーローになったつもりが、自分が死んじゃうなんて、アホらしいね…」


ほんとに、カッコ悪い



「ご自分を卑下してはなりません。」


アリスは、また悲しそうな顔をした


そうか


私、この子のこういう顔を、何度も見たことがある


そして、何度も頼んだ

もう一度、と




そしてこの子は

その度何度も悲しそうな表情を私に向けた


「アリス、ちゃん?…」


「カナさん…!」


アリスは驚いた様子で顔をあげ、私を見た



「アリスちゃん…何度も、付き合わせちゃったんだね…ごめんね、もう、嫌だったよね…」


「謝らないでください…これも全て、私の甘さ故…私が、もっとハッキリと伝えておけば、あなたをこれ以上苦しませずに済んだのに…」



違う

アリスは悪くない
私がワガママだったから
認めたくなかったから


だって



「サキに、プレゼント、渡したかったなぁ…」



渡して、おめでとうって

サキはきっと、涙もろいから
すぐ泣いちゃって

私ももらい泣きしちゃったりして



おめでとうって…