ー黒陽ー



「…カナさん、あなたは、もう何度も“この日”を繰り返しているんです。未来が変わることを信じ、何度も、何度も…」


私はゆっくりと
今、真横にまで迫っているトラックを見る

運転手の顔まで見えた

ブレーキをかける素振りもなく、
急に飛び出した私や、男の子に反応するでもなく

首がカクリと下がり
寝ている



「…私は、このトラックに跳ねられて、死、ぬの…?」



ゆっくりと頷く、
アリスと名乗る女の子



「…うそ…」



震えが止まらない



「い、イヤ…死にたくない…死にたくないよ!!!!」



泣き叫ぶ私を
表情も変えずみつめる
黒をまとった女の子



「あなたは、死神なの…!?」


死の直前である私を迎えに来たんだ


「いえ…私は、そんな大層なものではありません」



ゆっくりと首を振りながら
少し驚いた顔をした



「でも、その返答は初めてですね。私が途中で介入したからでしょうか…」


「何を言っているの?」

ゆっくりと私のほうを見て、少しだけ微笑んで見せた

本当に、なんて美しい顔立ちなんだろうか
彼女の肌の白さが
その彼女の纏う黒と同調して
より美しさを引き立てているようだった



「カナさんの繰り返した死の直前の中で、私の事を死神だと言ったのは初めてなのですよ」


これも、進歩なのかもしれません


そう呟くのも聞こえた