顔をあげる
「あなた…?!」
黒い、女の子
長く腰まである毛先が少しウェーブがかった髪
黒い花の髪飾りをつけ
ふわりとした
フランス人形が着るような豪華なレースをあしらった膝丈の漆黒のドレス
そして本当に人形のような、息を飲む美しさ
美しく冷たい美貌
同い年くらい、だろうか
「私の名はアリス、ですよ。カナさん」
「なんで、私の名前…?!」
「あなたと会い、こうして会話をするのは初めてではないからです」
「どういう意味…?」
静止した、静かな世界
反対側の歩道には
驚いた顔で動かない、サキ
地面に痛そうに倒れる子供
そして動かない
真横にいるトラックと、私
「まだ、続けるのですか…?」
「だから、続けるって何を!」
「死の直前です」
「はっ…?!」
何を、言っているんだ
「あなたが今繰り返していることは、あなたの死の直前。あなたはこの直後事故にあい、死亡します」
「…………」
言葉が、出ない
アリス、と名乗ったその女の子は
表情が変わらない
感情が無いみたいだ
それが余計に不気味で、
理解できない
淡々と、残酷なことを話す

