ー黒陽ー




「…そうしてお前は、あのカナって人間の最期の願いを叶えた」



少し冷たい

でも心地よい風が流れ

リオさんの首飾りの鈴がチリンと揺れる





「いま、思えば」




私は頬杖をつき
遠くまで広がる
色とりどりの花畑を眺めていた



「…私が、実験がわりにカナさんを犠牲にしたようなものです」



未来を変える可能性の
実験に





「結果、未来は変わらなくて…そして」



顔が歪むのが分かる


私は、この話をすると
いつもこう


辛くて

胸がいたくなって

逃げ出したくなって








「…あの子を、何度も殺しかけた」





胸が、更にズキンと痛んだ






「“黒陽”本部が お前らに情をだすなという理由がわかっただろ?
死を迎えるものに対し、何度も何度も
死の恐怖を与える。」





そう





私は
何度も

本当に、数えきれないほど
カナさんを死の間際まで引き戻し

あの直前までを繰り返した




何度も、何度も