家を出ると、
眩むほどに明るい太陽と
目の前に広がる庭園
色とりどりの木々や花畑
通路は舗装されレンガ色の道が続いている
“黒陽”の敷地は全て庭園で、その広い敷地の中に私のような住民が住んでいる
「本当に、きれいなお庭ですね…」
辺りを見回しながら独り言のように呟く
「ここの生活には慣れたか?」
数歩前を歩いていたリオさんが
くるっと振り向きながら問いかけてくる
「ええ、だいぶ慣れました!もうここに来て3ヶ月になりますし」
「そうか…」
3ヶ月も経つが、まだ殆ど仕事には携わっていないし
いつもリオさんに叱られてばかりで、私はまだまだ未熟だ
「早く、しないと…」
「だが焦るな」
前を歩いていたリオさんが立ち止まる
顔がチラッと横を向いたので
私もそちらを向く
噴水があった
その噴水の塀に腰かける
私と同じ、“黒陽”の制服を来た
ショートカットの女性
私には、リオさんの言いたいことがわかっていた
「感情を失うな、と言うことですね」
「そう言うことだ」
そうしてまたスタスタと歩き出す
わかっています、リオさん
“黒陽”は、人の死を見届ける機関
人の死の瞬間を看取り、迷わないよう導く者
つまり、どんな凄惨な死でも、私たちは看取らなければならない
そしてその現場を見れば見るほど
心は磨り減り
感情を無くしていく
つまり、先ほどの噴水にいた女性には
感情がないのだ

