「フフフ……今日から夏休みよ」

 少女は、勝ち誇ったようにニヒルな笑みを浮かべた。

 さらりと流れる腰までのマロンカラーの髪に、大きな瞳は雨上がりの水たまりのように澄んでいて、フリルのついたワンピースが愛らしさを引き立てている。

 魔法学校に通う16歳の少女は、これからの夏休みに向けて意気揚々と分厚い本を掲げた。

 母は出かけていて留守だ。

 今のうちに惚れ薬を作る! ──と地下室に駆け下りた。

 ずらりと並べられた棚には沢山の小瓶や箱が積まれていて、妖しい雰囲気を醸(かも)し出している。