「はあ
なんとまあ


菊は 
辛い目にあっただろうて


かわいそうに」


玉は 
そう言って

寝返りをうった菊の顔にかかった前髪を
なおしてやった。


「うむ。

あの守護大名 
景虎の本意は

わからずじまいであったが


今後、わしが尾張を
背負う事になった暁には


越後を 
必ずや
手中に治めようぞ!」


信長の瞳は
囲炉裏の火を

映しメラメラと
燃えていった。