信長は、眉根に皺を寄せ
「良いと言っておる。
そなたが 誰であろうと
わしは、一向に構わぬ!」
更に
大きな声を発し
鋭い眼差しを
菊へと向けた。
両腕を掴まれたままの菊は
あの信長の逆鱗に触れたかと思い
わなわなと体を震わせた。
だが、次の瞬間
菊の体は
信長の大きくて逞しい胸の中へ
引き込まれていた。
信長の熱い体温が
菊の体に伝わる。
より一層
力を込めて
信長が菊を
抱きしめた為、
菊の体の力が抜けて
信長に渡された
ホタルブクロの花が
地面に落ちて行く。
「あ」
「そなたは
今のままでよい……。
今のままで 良いのじゃ」


