「わたしは」
景虎に握られた手を引っ込めると
菊は
景虎を
真っ直ぐに見た。
「ごめんなさい
なんと言われても
帰りたい気持ちは変わりません」
景虎は
「これだけ
言っても
無理と申すのか?
また逃げ出すと?」
「……はい」
「この者を……」
景虎は
立ち上がると
悲しげに
菊を一瞥し
大声を上げた。
「この者を!
地下の牢屋へ
入れるが良い!」
部屋を出て行く
景虎が
菊を振り返る場面は
ついに
訪れなかった。
景虎に握られた手を引っ込めると
菊は
景虎を
真っ直ぐに見た。
「ごめんなさい
なんと言われても
帰りたい気持ちは変わりません」
景虎は
「これだけ
言っても
無理と申すのか?
また逃げ出すと?」
「……はい」
「この者を……」
景虎は
立ち上がると
悲しげに
菊を一瞥し
大声を上げた。
「この者を!
地下の牢屋へ
入れるが良い!」
部屋を出て行く
景虎が
菊を振り返る場面は
ついに
訪れなかった。


