「菊!」



竹林の中に
信長の声が響いてくる。




「何をしておる?」




草を分けて
雄雄しく進んでくる信長の姿は

菊でなくても
おなごであれば誰でも
惚れ惚れするような姿であった。





「はあ
 お花が咲いていたもので」

菊は頬を赤らめながら答えた。




しゃがんだ菊の周りには
たくさんの銀梅草が生えて

菊の姿を
より一層美しく引き立てていた。


信長は、菊の美しい姿に
目を細める。


『なんと! 美しい。

そなたは
その花のごとく美しい。

花のような
 おなごじゃ』




「花とな。
お前は 
まっこと、花が好きよのう」



菊の目の前に来ると
信長はしゃがんで 

ぐいっと
持ってきたホタルブクロを 
差し出した。