晴信は
ゆっくりと
首をかがめて
口を近づけ
舌先で
菊の足に滲んだ血を舐め取った。
「な!・・・」
菊は晴信の
気持ち悪さに
ぞっとした
寒気を感じた。
屈んだまま
菊を見上げた晴信は
片方の眉を上げ
菊の顔を
見つめた。
「ふーーーーん。
なるほどのう・・・
何か・・・お前には
人を魅了する気配・・・
あるいは
匂い・・・そのようなものが
そなわっておる・・・・」
晴信は
天井を見上げると
思いついたように手を打った。
「・・・このものを
引き渡すのは
止めにする」
家臣にそう
宣言した。
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